日弁連への異議申出書 8.13

異議申出書

日本弁護士連合会 御中

                      

1 懲戒の請求をした弁護士の氏名及び所属弁護士会   T弁護士 県弁護士会

2 懲戒の請求をした年月日   平成31年4月17日

3 弁護士会から懲戒しない旨の通知を受けた年月日   令和元年8月2日

4 弁護士会からの異議申出ができる旨の教示の有無及びその内容

   懲戒請求者は、この決定について不服があるときは、弁護士法第64条の規定により、日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。

   なお、異議の申出は、この通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に、書面によってしなければなりません(郵便又は信書便で提出した場合において、送付に要した日数は算入しません。なお、宅配便、ゆうパック、レターパックなどは「郵便又は信書便」に当たりません。)。

   記載事項及び必要部数の定めがありますので、異議を申し出ようとするときはあらかじめ日本弁護士連合会にお問い合わせいただくか、以下のウェブサイトを御覧ください。

   ※異議申出書の提出先・問い合わせ先

    日本弁護士連合会(担当:審査部審査第二課)

     〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3

     電話 03-3580-9841(代)

   ※懲戒請求事案に関する異議申出の方法について

     http://www.nichibennrenn.or.jp/jfba_info/autonomy/chokai/tyoukai_igi.thml

    (又は、検索サイトで「懲戒 異議 申出」と検索してください。)

5 異議申出の年月日    令和元年8月13日

6 異議申出の趣旨   弁護士会の決定を取消し、T弁護士の懲戒を求める

7 異議申出の理由

 議決書(2019年(綱)第4号)の「4、懲戒請求事由についての判断」の中で述べられている内容は、懲戒請求者が指摘した具体的な点について答えず、T弁護士が行った行為のうち、T弁護士に都合のよい部分だけを取り上げて正当化しているものである。具体的には次のとおりである。

(1)「4、懲戒請求事由(1)第1項について」

  懲戒請求者はT弁護士が行った事務処理の内容について問題にしているのではなく、2~3か月でできる事務処理を22か月もかけて行ったことを問題にした。それなのに本議決書ではそのことについて何の検証もされておらず、何一つ言及されていない。被後見人の生活状況に何か特別な原因があったのであればやむを得ない可能性もあるが、全くそうではなくT弁護士の怠慢や間違った判断によって22か月も長い期間を要したのだから、そのことによって生じた報酬を被後見人に負担させるのは財産権の侵害としか言えない。

 ① 平成29年2月~3月(自分が後見人になったことに気づかなかったから)

 ② 平成29年4月~8月(親族後見人の申出があったから)

 ③ 平成29年9月~平成30年3月(施設の人が普通預金に500万円必要と言ったから)

 ④ 平成30年4月~7月(忙しかったから)

 ⑤ 平成30年8月~9月(ある弁護士にそう言われたから)

  この中で被後見人に原因があるものはひとつもない。T弁護士自身の怠慢と誰かに言われたことを理由にしたものばかりである。どれも先延ばしせざるを得ないものではなく先延ばしを回避しようと思えばできたはずなのにT弁護士はあえて先延ばしする方を選択した。T弁護士は被後見人の財産管理という財産を守る立場にありながら、被後見人に何も原因がないのに、被後見人に金銭的負担を生じさせることばかり行った。これがT弁護士の過失または故意によるものであることは明らかである。

  本議決書においては①についてはT弁護士が認めたとあるが、②~⑤のそれぞれについてはどのように判断したのか全く示されていない。被後見人に何の理由もないのに金銭的な被害を生じさせ、その財産権を侵害したのがT弁護士でないとするならば誰なのか、T弁護士以外には考えられないのではないか。

  また、「家庭裁判所は、単に就職期間の長さだけではなく、対象弁護士のこれら一連の事務処理に鑑みて金60万円の報酬を決定したものと考えられ」とある。家庭裁判所は報酬の根拠を明らかにしていないため、これは単なる憶測にすぎない。「単に就職期間の長さだけではなく、対象弁護士のこれら一連の事務処理に鑑みて」決定したのであれば、T弁護士の行った事務処理の内容は2~3か月でできることなのだから、報酬額はむしろ15万円程度に決定されていたはずであり、理由としても成り立たない。

(2)「同上(2)第2項について」

  これは懲戒請求の理由として最も重要なものである。

  1000万円を信託銀行に預けるために500万円近くの出費を強いられるなどということがあってよいのでしょうか。しかも被後見人に起因する理由は何一つないのに。本議決書はそれを容認するものである。

  懲戒請求者は施設S課長の要望があったかどうかを問題にしているのではく、S課長の要望の内容がS課長の強い思い込みによるもので後に訂正したこと、被後見人にとって何の利益にもならないこと、後見制度支援信託の趣旨に反していることを問題にしているのに、そのことについて全く検証されておらず、言及すらされていない。実際に、施設のS課長が500万円貯まるまで信託をしないことを望んでいたのかどうか、被後見人にとって普通預金に500万円必要なのかどうか、どのような事態になったときに必要になるのかが全く明らかにされていない。

  S課長が要望したというのは最初のときだけで、後にすぐに信託の手続きを始めてくれるように何度かT弁護士に頼んでいる。それにもかかわらずT弁護士は信託の手続きを始めようとはしなかった。

  懲戒請求者は被後見人が3か月入院した場合の費用を調べて次のように示している。これは誰が調べても大差ない客観的なものである。

  <3カ月間の入院・治療に関わる費用 合計1,256,200円>

     ・医療費  月35,400円(高額医療費制度)×3カ月

      ・付添費用 1日1万円×90日

      ・ベッド、車いす購入代 15万円  ・その他雑費 10万円

  仮に、万が一の際に500万円必要になることがあると仮定しても、それを普通預金に預けておく必要は全くない。裁判所が示している通り、必要な手続きをして信託銀行から引き出せばいいだけのことである。万が一のための金銭を信託銀行に預けることによって守るための制度なのに、万が一のための金銭を普通預金に残すという全く制度の趣旨に反する判断である。

  S課長及び施設の所長、寮長はこれを認め、普通預金に500万円必要だという考えは撤回している。したがって、T弁護士が唯一の理由としてあげているS課長の要望も500万円必要だということも全くその根拠を失っている。S課長の要望も500万円必要だということも被後見人にとって何の利益にも繋がらない無意味なことであることが明らかになったのである。しかし、T弁護士はそのことを知りながら平成30年11月2日の報告書で「施設が成年後見人の万一に備えて蓄えてきたものであり、施設から本来的には500万程度の備えがほしい旨述べられていたため」と裁判所に対して虚偽の報告をした。

  また、仮に普通預金に預けておく必要があるというのであれば、800万円だけを信託銀行に預けることもできたのにT弁護士はそうしなかった。

  本議決書においては、はじめにS課長が個人的な思い込みで話した内容のみが取り上げられて、S課長が要望を取り消したこと、200万円もあれば十分だという事実、そして何よりも被後見人にとって何の利益にも繋がらないという事実について、全く触れられていない。

  被後見人にとって何の利益にも繋がらないだけではない。その間の報酬を月2万円としても普通預金に500万円貯まるまでには18年以上もかかり、合計500万円近くにも膨れ上がる。このことによって被後見人は何の恩恵も受けないまま膨大な出費を余儀なくされるとともに、T弁護士は少なくとも18年間で500万円近くの膨大な利益を得ることになる。

  被後見人の財産を管理すべき専門職後見人が被後見人に膨大な金銭的被害を生じさせることはむしろ避けるようにすべきであり、避けようとすればできたはずなのにそうしなかったT弁護士の責任は重大である。1000万円を信託銀行に預けるために500万円近くの出費を強いられるということは決してあってはならないことである。

(3)「同上(3)第3項について」

  T弁護士が報酬を辞退すると話したことは記録に残っているだけでも数回ある。平成30年1月17日、平成30年2月21日、平成30年4月13日である。しかも辞退することを裁判所に伝える文書を提出するとまで言いながら、何もしなかった。平成30年11月8日、家庭裁判所書記官は私に「長期間になった分の報酬は辞退すると弁護士が言っているのだから(このまま信託の手続きをしてしまった方がいい)」と言った。それほど報酬の辞退は誰もが信じて疑わない状況にまでなっていた。T弁護士は辞退すると何度も言っていたからである。それにもかかわらず、T弁護士はそれを否認した。

  本議決書においては、T弁護士が報酬の辞退の意思を表明した記録が複数回年月日まで詳細に記録されているにもかかわらず、何の根拠もなく否認したT弁護士の言い分を採用する偏った判断がされている。T弁護士がどのような根拠をもって否認したのかを明らかにすべきである。

  懲戒請求者には嘘をついても何の利益も得られないが、T弁護士には可能な限りの嘘をつかなければならない理由がある。

(4)本議決書「2、対象弁護士の、成年後見人としての事務処理の経過」の中で「(5)上記の報告書に記載されているS課長の供述内容は、懲戒請求書別紙・・・同年2月6日の欄、3月13日の欄、及び同年3月16日の欄の各記載内容に合致する」とあるが、それぞれの欄の内容は次の通りであり、全く合致しておらず、むしろ否定するものである。

  平成30年2月6日 9:00~ 施設S課長と電話

    T弁護士から、S課長さんに確認したら500万円貯まるまで待ってほしいと言われたと聞いたが、事実かと聞いたところ、信託に預けてしまうといざという時、お金を出すのに面倒な手続きがあるということを言われたので、500万円くらい手元にあればいいというニュアンスで言った。

    手元に普通預金を置いておいてほしいことやT弁護士は後見人を辞めるということの話の方が強く印象に残っているようだった。

    信託からお金を引き出すといっても、その手続きは後見人がやることなので施設側には迷惑はかからないと話したところ、S課長さんがそうであればすぐ信託にするようにT弁護士に電話すると言った。

 

  平成30年3月13日  S課長(育成会の人も同席)と面談 

   S課長「入院、有料老人ホームに入ることを考えると、500万円くらいあるとスムーズにいく。信託からお金を引き出すには1カ月かかることもあったので、信託に預けたお金は万が一の際にも使わないほうがいい。」

 

  平成30年3月16日 9:27 S課長に電話

    300万円しかないと思ったから500万円貯めてから信託にしてほしいと言ったのではないのですね。

   S課長「1000万円あるのは知らなかったが、それとは関係なく入院や有料老人ホームに入ることを考えると500万円くらいあった方がいいと言った。」

    有料老人ホームに入るのに500万円くらいあるとスムーズにいくということだったが、現金がなくて信託からお金を引き出してから支払うことによって、有料老人ホームに入れないことがあるのかと聞いたら

    S課長「入れないということはない。ただお金があった方がスムーズにいくと思うだけ」

 

   以上の通り、S課長は単に500万円あった方がスムーズにいくと思っただけと、その必要性を否定している。また、500万円貯まるまで待つ必要ないからすぐに信託の手続きをしてくれるように、T弁護士に依頼もしている。

   それにもかかわらず、T弁護士が最後までS課長の切実な要望として処理したことは「丙1号証の2 懲戒請求者の令和元年6月7日付当委員会宛回答書」(平成30年11月2日付報告書)に明記されている。

(5)同上の中で「また、上記(4)③について、同裁判所が異議ないし疑義を呈した形跡は認められない」とある。しかし、裁判所が異議、疑義を呈すれば、そもそもこのようなことにはなっていないはずである。裁判所に異議、疑義を抱かれなかったのは、T弁護士が裁判所に虚偽の報告を行っていたからである。

(6)本議決書「2、対象弁護士の、成年後見人としての事務処理の経過」の中で「(6)対象弁護士は平成30年1月18日付で同裁判所に対して、同月17日に行った懲戒請求者との面談を承けて、次の報告をした」とあるが、この報告書は証拠資料の中には存在せず、根拠のないものである。また、その中では「①長尾修一郎は、成年後見人が、施設と結託して被後見人の財産を横領するため、あるいは報酬欲しさに、後見信託をしようとしないと決めつけている」という極めて主観的な表現がされている。

   懲戒請求者が疑いを抱いたのは事実だが、決めつけてはいない。疑いを抱いた理由はT弁護士の次のような行動によるものである。これで疑いを抱かない方が極めて不自然である。

   ①親族後見人から預金通帳を預かる際に、3か月で終わると言いながら、3か月過ぎても何の連絡もしなかったこと

   ②親族後見人に預金通帳の受領書および報告書のコピーを送ると言いながら送らなかったこと

   ③懲戒請求者に対して、普通預金が4~5年で500万円になると騙したこと(実際には弁護士報酬が差し引かれるので、18年以上もかかる。実際にこの約2年間で60万円の報酬を差し引かれた。この間普通預金は約80万円増えているが、その内の約60万円は遺産相続の臨時収入によるものなので、2年間で20万円しか増えていなかった。このことからしても4~5年で500万円になるというのはあり得ない。)

(7)T弁護士は「後見信託をするには普通預金に500万円貯まることが必要」というS課長の要望を全く実現しないまま後見信託を行った。これは「後見信託をするには普通預金に500万円貯まることが必要」という判断が間違っていることをT弁護士自身が証明したものである。具体的には次のとおりである。

 ・「後見信託をするには普通預金に500万円貯まることが必要」としながら、まだ439万円しかない状況で信託の手続きをすることを決定したこと(平成30年11月2日付報告書)

 ・「後見信託をするには普通預金に500万円貯まることが必要」としながら、T弁護士が辞任した時点で、普通預金残高がわずか380万円しかない状態になっていたこと